犬以外の動物は「しつけ」ができるのか【前編】賢い子ほど飼育が難しい理由

「〇〇(犬以外の動物)って、しつけられるのですか?」

過去、アニマルトレーナーとして20年以上、犬に限らずさまざまな動物のトレーニングに携わってくる中で、最も多くいただいた質問の一つです。

この問いに答える際、非常に難しいのが「そもそも『しつけ』とは何か?」という定義です。
実は、動物の世界では「賢い動物」ほど、人間にとっての飼育は難しくなるという側面があります。

賢い動物ほど「独学」でルールを作る

トレーナーにその賢さの方向性を示す力量がないと、動物たちは独学で独自のルールを作り、どんどん独立心を芽生えさせていきます。

象徴的な例が「カラス」です。

僕がカラスのトレーニングを担当した際、師匠から「鳥と思うな。羽の生えた犬だと思え」と言われました。
実際、彼らにはハンドサインや声のサインが明確に通じます。

しかしその分、こちらの細かなクセ妥協を全て見抜いてきます。

彼らは常に「どうすれば楽ができるか」「どうすればやらなくて済むか」を考えています。
こちらが「本当は良くないけれど、今日はまあいいか」と一度でも妥協すれば、彼らは次からそこを善し悪しの基準として固定してしまいます。

脳の「合理化」が招く人間とのズレ

こうした行動は、決して彼らが怠け者だからではありません。
むしろ、脳の「合理化」「効率化」の能力が非常に高い証拠なのです。

賢い個体ほど、目的の結果にたどり着くまでの「最短距離」を自分で見つけ出そうとしますが、人間もまた「楽したい動物」なので、しつけが疎かになりがちです。
その結果、人間の意図とは裏腹に、人間にとっての「期待を裏切る行動」をとるようになり、人間側からは「難しい子」「言うことを聞かない子」というレッテルを貼られてしまうのです。

この「賢いがゆえの合理的な行動」は、実は私たちの身近にいる家庭犬にも全く同じことが言えます。
次回では、このお話を「家庭犬」に当てはめて、具体的にどう向き合えばいいのかをお話しできればと思います。

愛犬を迷わせないための具体的な振る舞い

Q
愛犬が何かに対して怒ったり、怖がったりしている時、どう対応するのが正解ですか?
A

人間側が堂々と先にその対象へ近づき、「大丈夫、これは安全だ」という事実を態度で示してください。飼い主が焦って引き離そうとしたり、なだめたりするのではなく、リーダーとして先に状況を確認し、安全を保証する背中を見せることが、愛犬の緊張を最も早く解く近道になります。

Q
不安からソワソワして落ち着かない時、指示を出すのは可哀想ではありませんか?
A

むしろ逆です。不安な時ほど、「お座り」や「横について(ヒール)」など、今何をすべきかを明確に示すコマンドを出してあげてください。やるべきことが決まることで、犬は「自分で判断しなければならない」という精神的負担から解放されます。正解の方向性を指示し、それに従わせることは、混乱というストレスから愛犬を守る防波堤になるのです。

ビジョンを持つ

愛犬が心からホッとできる場所を作るために、まずは私たち飼い主が、頼れる導き手になること。

犬は「自由」を求めているのではなく、「確かな基準」を求めています。
あなたが確固たる強さを持って振る舞い、明確な道筋を示し続ければ、愛犬は余計な気を張ることなく、本来の穏やかさで過ごせるようになります。

支配ではなく、共生のためのリーダーシップ。
明日から、愛犬が迷った時にスッと手を差し伸べられる「確かな導き手」を目指しましょう。

この記事を書いた人

ank@ank-wildlife.com